「6月は雨だらけなのにどうして水無月っていうの?」
この時期がくるといつも、この呼び名を不思議に思っていた幼いころの自分を思い出します。
こんにちは。
ドライフラワー・スワッグ専門店、土と風の植物園 の高石です。
今週、関東甲信地方では梅雨入りが発表されましたね。
「梅雨って好きじゃない」「気分が鬱々とする」という方もいらっしゃるかもしれませんが、私は雨の日って嫌いじゃないのです。
ひっそりと耳に届く雨音、しっとりと濡れた草花の匂い、水たまりに映りこむ薄墨色の空、それをゆらゆらとかき乱す雨粒。
雨の日しか見えないもの、感じられないものを、五感がよろこんでいる。
それを感じて自分も嬉しくなるのです。
本日は、そんな雨の日が増える梅雨入り時にシーズンを迎える花、芍薬(シャクヤク)のお話です。
見目麗しい芍薬のドライフラワーは、ずっとずっと皆さまにお届けしたいと思っていた花でもあります。
初めてお出迎えした生花の芍薬
5月の終わりごろ、土と風の植物園のアトリエに、たくさんの芍薬の生花が届きました。
芍薬の開花時期は5月から6月。
届いたばかりで、ほとんどがつぼみをきゅっと閉じています。
たくさん集まっている姿が、おしくらまんじゅうみたいで可愛い。
つぼみはピンポン玉ほどの大きさです。
数日寝かせると、固く閉じていたつぼみが徐々に開き、大きな大きな花を咲かせます。
まるまるとした、ちびっこたちが、美しい女性へと姿を変えたような。
仕入れたのは、花びらがいくえにも重なった、八重咲のもの。
花びらひとつひとつが、うっとりするほど美しい。
「立てば芍薬」という言葉がうまれたのも納得です。
芍薬は、古くから生薬としても親しまれてきました。
日本へは、平安時代以前に薬草として中国からやってきたといわれています。
「芍薬」の「芍」は、抜きんでて美しいという意味。
見目麗しいだけでなく、薬としても役立つ花ということで、この名がついたようです。
生花の芍薬は、ずっと傍にいたくなるような、清らかで芳醇な香りがします。
ただ、先月ご紹介したラベンダーなどと違って、芍薬は香りの成分が抽出できないそうです。
調香の技術で香りを再現するしかないというのは残念ですよね。
それでもハンドクリームや香水など、たくさんのアイテムで芍薬の香りが再現されているのですから、それだけ人々にとって魅力的な香りということですね。
芍薬がドライフラワーになるまで
花が開いてきたら、芍薬たちを丁寧に干して乾燥させ、新鮮なドライフラワーにしていきます。
花びらが多く、幾重にも重なっている芍薬。
なるべくすばやく乾燥させることで、より美しいドライフフラワーに仕上がります。
生花とドライにしたものを比べてみると、手のひらにおさまらないほどの大きさだった花が、半分ほどの大きさになっています。
この変化が驚きで、おもしろくて。
生花との違いを楽しめるのも、ドライフラワーの魅力のひとつですよね。
個人的には、生花だとピュアで清純な雰囲気だな、と感じます。
みずみずしさが素敵。
ドライのものは、サイズはちいさくなったはずなのに、豪奢であでやかな雰囲気が感じられます。
生きざまがぎゅっと濃縮されたような成熟というか、色気があるなと。
濁りのない明るいグリーンだった茎も、ドライにすることで、アンティーク感のある、少しごつごつとしたいびつさを感じさせる姿に。
この茎や、くしゅくしゅの葉にまで色気を感じるのはわたしだけでしょうか。
あでやかな存在感を楽しむ
くしゅくしゅの花びらや葉、茎のシルエットが、何ともいえないこなれ感を生み出す、芍薬のドライフラワー。
1本で無造作に置いてもサマになりますし、他の花と組み合わせてフラワーベースに飾っても華やかさが引き立ちます。
清楚な花々と一緒に束ねて、ブーケにするのもおすすめです。
美しい人を表す花として、古くから日本で親しまれてきた芍薬。
海外で盛んに品種改良が行われていたこともあり、海外の人にも馴染みがある花です。
和洋どちらの雰囲気の花材にも合わせやすいところも、魅力かもしれませんね。
梅雨に負けないお手入れ方法
ドライフラワーの大敵は、直射日光や高温多湿な環境。
日本もだんだんとドライフラワーに優しくない気候になってきている気がします。
太陽の光が当たる窓際は避け、日の届かない風通しの良い場所に飾りたいものです。
梅雨を迎えるこの季節は、じめじめとした湿気が押し寄せますよね。
エアコンのドライ機能や、除湿機を使って湿度を低めに保ってあげましょう。
風が直接お花に当たらないように優しく見守ってくださいね。
部屋干しされている方は、洗濯物もよく乾いて一石二鳥かもしれません。
わたしは湿度計を持っているのですが、あまり活用できていないので、自宅に飾っているドライフラワーのそばに置いて湿度を確認しながらエアコンを使ってみようかな。
自分がカサカサにならない程度に、ドライフラワーが心地よい湿度にしたいと思います。
いかがでしたでしょうか。
梅雨の時期にドライフラワーとして出回ることの多い芍薬も、お手入れすることで、より長く楽しむことができます。
水の無い乾いた田に水を入れ、豊作を願いながら田植えをする、水無月。
この季節の人々の営みを昔から見守ってきた芍薬を、お部屋に取り入れてみてはいかがでしょうか。
梅雨を迎えるこれからの日々に、幸福感たっぷりの彩りを添えてくれることと思います。
ドライフラワー・スワッグ専門店|土と風の植物園
倉敷市の中心部から少し離れた緑豊かな小さなアトリエで制作。厳選したドライフラワーや道具、動画を見ながら作れるスワッグ手作りキットなど、各種取り揃えています。